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「水玉の履歴書」草間彌生(集英社新書)

草間彌生の半生を振り返った著作です。水玉アートやかぼちゃのイメージが強いですが、その考え方に触れることでよりいっそう彼女のアートの本質が理解できます。

幼少期に幻覚を見るようになり精神科にも通っていました。ちょうどその頃。

「ある日、机の上の赤い花模様のテーブルクロスを見た後で、目を移すと、天井にも窓ガラスにも柱にも同じ赤い花の形が張りついていました。部屋中、体中が花模様で埋め尽くされてしまい、私は自己消滅してしまう気がしました。」

ということがありました。これはその後に続く彼女のアートを主体をなしていくことになります。

「見る人は作品の中にすっかり没入することで、日々の心配事から解き放たれます。これこそがアーティストからの最高の贈り物であり、草間が『自己消滅』というコンセプトで意味したことなのだと思います。」テートモダンのキュレーター フランシス・モリス談。

「草間のアートは心理的な抑圧からの自己の解放を願う行為でありながら、その願いが自己と世界の同時的な救済に昇華しているところに真の偉大さがあるという。」美術評論家 建畠哲談。

また彼女は言います。

 「自分にとって芸術の最大のテーマは生と死でした。・・・齢を重ねた今は、自分が後世の人にどのようなメッセージを残して死んでいけるかを、とても強く考えています。」

そして。

「どんな仕事に就いていようと、その人が今日よりも明日、明日よりも明後日と、自分の生命の輝きに一歩でも近づけたならば、虚飾と愚かさに満ちた社会のなかであっても、それは人間として生まれたことを示す、ひとつの立派な足跡となるのではないでしょうか。」

「肉体は、いつか生命が絶えるという自然界の定めによって死体となります。けれども、私が作った数々の作品は、全世界の人へのメッセージとなって残り、人格をもってひとり歩きを始めます。」

彼女の珠玉の言葉に出会える本です。




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by nichijou-raisan | 2018-07-28 23:01 | レバレッジリーディング | Comments(0)

「民俗学の旅」宮本常一

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「民俗学の旅」宮本常一 (講談社学術文庫)

まち歩きの系譜の中で民俗学まで発展した宮本さんの功績は非常に大きく、内容は非常に深いです。

はじめに、に書かれている文章

「民俗学という学問は体験の学問であり、実践の学問であると思っている」

自身が百姓の家に生まれ生きていくためにその技術を学び実践してきました。前段は祖父、父、母、そしてふるさとを紹介していきます。自分がなぜ全国を歩き、民俗学に関わってきたのかについてその背景や縁のようなものを説明しています。古き良き日本の田舎に見られた温かい人のぬくもり、自分の道がどう決まっていったのか、宮本氏の人生が書かれてます。

「民俗学への道」という本の中で宮本氏はまた次のように言っています。

「民俗学とは、かつて文字を持たなかった民衆社会の中でおこなわれた、文化伝承の方法であった言葉と行為ー慣習的生活ーの記録化と、これをもとにして文化の原型への遡源と、文化の類型、機能を研究しようとするものである。」

農業技術指導をすることで日本の自給率をあげ、豊かな暮らしを実現しようという中から発生した土地土地の生活の技術、これらの伝承者となることが、日本民族の探求の旅でもあったといえます。

決して裕福ではなくボランティアで行っていた活動を中心であっただけに、使命感、志の高さが宮本氏の活動を支えたのではないでしょうか。

歩くことについて。

「私自身にとって歩くというのはどういうことだったのか。歩くことが好きだったのである。歩いていていろいろのものを見、いろいろのことを考える。・・・要するにひとにあい話をすることが好きだったのだろう。同時にまた人の営みを見るのが好きだった。」

「どんなところにも人間の意志が働き、それが現実のものとなっており、しかもその意思と意思には限界があり、限界が境を作っているのである。」

「われわれはただ自然といっているけれども、その自然もよく見るとほとんど人間の手が加わっており、人間の手の加わったものの中にはそこに人の生きてきた姿があり歴史があったのである。」

人生について。

「どのようにささやかな人生でも、それぞれがみずからのいのちを精一ぱいに生きるものはやはりすばらしいことである。生きるということは何かいろいろの意味があるだろうが、一人一人にとってはその可能性の限界をためしてみるような生き方をすることではないかと思う。」

文明について。

「文明の発達ということは、すべてのことがプラスになり、進歩してゆくことではなく、一方では多くのものが退化し、失われてゆきつつある。それをすべてのものが進んでいるように錯覚する。それが人間を傲慢にし、傲慢であることが文明社会の特権のように思いこんでしまう。」

一遍上人。

「口にとなふる念仏を あまねく衆生に施して これこそ常のすみかとて
いずくに宿を定めねど さすがに家の多ければ 雨にうたるる事もなし」

最後に。

「私は長いあいだ歩きつづけてきた。 その長い道程の中で考え続けた一つは、いったい進歩というのは何であろうか、発展というのは何であろうかということであった。 同時に失われていきつつあるものも多いのではないかと思う。

進歩のかげに退歩しつつあるもおんをも見定めてゆくことこそ、今われわれに課せられているもっとも重要な課題でないかと思う。

多くの人がいま忘れさろうととしていることをもう一度掘りおこしてみたいのは、あるいはその中に重要な価値や意味が含まれておりはしないかと思うからである。

これからも人間は長い道を歩いてゆかなければならないが、何が進歩であるのかということへの反省はたえずなされなkればならないのではないかと思っている。」

非常におすすめしたい本です。




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by nichijou-raisan | 2018-07-19 08:54 | レバレッジリーディング | Comments(0)

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「スノーピーク『好きなことだけ!』を仕事にする経営」山井 太(日経BP社)

アウトドアブランドで有名なスノーピークの社長である山井さんの著作です。自社の経営について語ったもので非常に濃い内容です。

年間30から60泊をキャンプで過ごす根っからのアウトドア好きな山井さんでこそのスノーピークであると認識できます。

スノーピークは「真北の方角」が会社の方向になります。そしてそれは、「ユーザーの笑顔」であるといいます。

現在会員数は10万人。こうしたファンをどう生み出すか、これは他社と圧倒的に差別化した製品、サービスの提供であると考えてます。

80年代に9800円のテントが一般的だった時代にスノーピークが販売したのは、16万8千円。これでも初年度に100張りも売れたそうです。

スノーピークウェイという顧客と社員が一緒にキャンプを楽しむイベントを開催していて、積極的にユーザーに関わっていく。また全員で楽しめるゲームをしたりと、顧客だけでなく社員も真の顧客は誰かを認識するのに役立っているといいます。

スノーピークの商品に保証書はありません。なぜなら永久保障だからです。こう宣言することで製品へのこだわり、徹底した品質を生み出せるのです。決して真似のできないことです。

新商品開発の判断時のポイントは「使った瞬間にユーザーの想像を超えた品質、使い勝手を感じていただけるかどうか」だと山井さんは言います。シンプルですが非常に高いハードルといえます。

顧客の満足を目指すため、販売も独自の方法が取られました。まずは問屋をはずし直接販売。これによりユーザーにできるだけ安く販売することができます。また販売は社員が行います。通常は商品だけ店頭においてそのお店の販売員が応対するわけですが、スノーピークはすべて社員さんが行います。これは商品説明も含めて顧客目線になっているかどうかだからです。ここまでの徹底ぶりには頭が下がります。

また社員には、毎日日報を書かせて、全員で共有。社長である山井さんも一人ひとりの日報を読みます。会社の成長は社員の成長だからだそうです。

キャンプ好きな山井さんは自然の中に身を置くことで、自然の時間を感じとり、経営者にもプラスになるといいます。そしてキャンプは最低でも二泊は必要と。これは自然のリズムに体がなじむには二日必要ということだからです。

山井さんは自身の仕事を「これから業績を伸ばすことにつながる仕事だけしていこう」と決め、具体的には「新しいことに取り組む」か、「既存のビジネスを伸ばす」かのどちらかで、新しいことに取り組むほうが自分に合っていると思ったそうです。

経営とは何か。

「常識の集積と創造」。卓越した常識あるいは原理原則を見抜く力と言う山井さん。

また、マネジメントの観点からスノーピークを表現するとすれば、「好きなことだけを仕事にする」経営、これは「好きな製品だけを作る」ブランドと言い換えることができるといいます。

世間一般の会社の多くが、思考軸がライバル会社に対してどうするかに基づいてではなく、「好きなことをしよう」という発想が感じられないケースが多く残念という山井さん。

非常にするどい指摘です。

「スノーピークの「武器」は、経営者である私、そして企業としてのスノーピークに3つの選択の自由があることだと思う。すなわち誰に対して、どんな製品を、どんな形で売るのかを決める自由だ。この3つの組み合わせをどうしていくかを考えることこそが経営者の仕事だ。」

事業を通じて人と自然をつなぐことを目指してきたスノーピーク。そのコアな価値は「人間性の回復」

山井さんは創業の父親の経営する時代に売り上げ5億、93年には25億まで延ばしたものの、99年には14億5千万に急減、そして現在は45億。まだまだ楽しみな会社です。


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by nichijou-raisan | 2018-05-27 22:00 | レバレッジリーディング | Comments(0)

「日日是好日」森下典子

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「日日是好日」森下典子(新潮文庫)

副題は「お茶」が教えてくれた15のしあわせ、とあります。本の表紙の写真を見て手に取る人はきっとお茶をやっている人かと思います。お抹茶茶碗に茶せんで点てた温かいお抹茶。

私自身、お茶のお稽古を始めて3年が経ちました。この本に書いてある内容はお稽古を始めて、何から何まで疑問の連続の日々の中で、一条の光が差すようです。

約400年続いたお茶の作法、文化、そして多くの方がお稽古をしていることの大きな理由が感じられます。非常に深い部分での文化論が流れているようです。

「すると、ある日突然、雨が生ぬるく匂い始めた。『あ、夕立が来る』と思った。」

お茶を通して学ぶのは実は作法ではなく、生きること。

これまでになく、一気に読んでしまうほど、感動的な本でした。おすすめです。


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by nichijou-raisan | 2018-05-27 21:17 | レバレッジリーディング | Comments(0)

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「おだやかに、シンプルに生きる」枡野俊明(PHP文庫)

枡野さんといえば、住職であり、かつ庭園デザイナーとして著名な方です。偶然ですが大学の先輩にあたる方で少し親近感を覚えます。

曹洞宗建功寺の住職の傍ら数々の日本庭園を設計されています。現在は多摩美術大学の環境デザイン学科の教授もされています。

さてこの本は題名にあるように、おだやかな心を取り戻すための禅語が抽出されています。今の自分にきっと合う言葉に出会うことができると思います。

構成は、
一章 シンプルに生きるための方法
二章 人づきあいの心得
三章 仕事との向き合い方
四章 自分を高める智慧
となっています。

一部の紹介です。

「一期一会」
「一期」とは人間の一生。そして「一会」とはただ一度きりの会合。この世は移ろいとどまってはおらず、その時は二度とありません。この言葉の意味は誰かとの出会いだけでなく、自分の心持についても、そのひと時を大切にして生きていくことを示唆しています。

「而今」(にこん)
禅の世界では過去も未来もなく、あるのは現在だけです。過去を悔いることも、まだ来ぬ未来に思いをはせても意味はありません。人が生きているのはいまというこの瞬間です。而今という言葉は、命の真実は「今」にしかないことを説いた言葉です。

人生さまざまな出来事がありますが、その時々でしっくりくる言葉との出会いがあるでしょう。



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by nichijou-raisan | 2018-05-27 20:56 | レバレッジリーディング | Comments(0)

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「人生の手引書」渡部昇一(扶桑社新書)

英語学者で評論家の渡部昇一さんの著作による人生哲学書です。表題に「挫けそうになったときに読む」と大きくありますが、そうでなくても非常に参考となる内容です。

「人は無意識のうちに、自分の努力不足を周囲のせいにしてしまうものである」これは往々にしてあることで、人が成長するためには自らを厳しく律することで、新たな道が開かれるということを言っています。他者だったり物事のせいにすると、自己弁護になってしまい、その瞬間から成長が止まります。

「難問にぶつかったときの決断拒否はあやまちの中で最大のものである」フランスの哲学者デカルトの名言です。決心し行動することでいいにしろ悪いにしろ結果が出るので、しっかりと決断すべきといいます。

「望みを持ったなら、どうしたらできるかを考える、それが第一歩」しごくまともな話ですが、常に努力の第一歩は自分の欠点を踏まえたうえで、どうしたらできるのか、を考えることです。

「モノより心、心よりモノではなく、モノと心が大事である」人間関係を作るのに感謝は大切ですが、欠点は相手には見えないこと。モノと心の両方が大事というのは、形で表すことです。手紙や贈物がいかに大切かがわかります。

「周囲とズレを感じるのは、自分のモノサシを持っているということである」ズレは自分が構築した括弧たる自分の常識、自分なりのモノサシと思うとよい。

「もし違和感を抱いたなら、世間の常識よりも自分の感覚を信じる」常識とは絶対的なものではなく、時代その他さまざまな状況によって変化する非常にあいまいなものである。また権威も同じ。周囲に流されない、自分の意見をはっきりさせていくことが大切である。

「お金に対して、貪欲になっていい」お金は生活の充実度を格段に上げてくれる、非常にポジティブな力もある。お金はないよりあったほうが絶対にいいもの。

「無欲であることは、すばらしいことなのか」名声を求めるのは傲慢ということではなく、健全な念願であるといいます。その志があって、人は成長し、失敗しながらも自分の道を見つけていくものだから。

「幸田露伴が説いた幸福三説とは」これは非常に興味深い内容です。

1、惜福 一度めぐっていた幸運をすべて使い切ってしまわない
2、分福 自分にめぐってきた福を一人占めせず、周囲にも分け与える
3、植福 幸福の種を蒔いておく

上記は抜粋ですが非常にためになる内容でおすすめです。


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by nichijou-raisan | 2018-03-26 00:12 | レバレッジリーディング | Comments(0)

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「写真がもっと好きになる」菅原一剛(ソフトバンククリエイティブ)

写真家 菅原一剛さんによる写真本です。これは撮影者に対してカメラ技術や撮影術が書かれている本ではなく、きれいな写真をとらなきゃという肩の荷を降ろしてくれる本です。

菅原さんのおすすめは、まずカメラを持って散歩しよう、だったり、ファインダーから覗いてみようだったり。何気ない生活の中で見えてくる美しかったり、気に留めたものが見つかったりします。

今でこそファインダーのない液晶画面のみのデジカメが多いですが、ミラーレスや小型のファインダーを付けることのできるモデルであればぜひファインダーから覗いて撮影しましょうといいます。

これは覗くという行為の中に切り取られた自分の意識ができるからです。液晶ごしの場合はその他の領域も見えてしまいます。

カメラに興味のある人はここから入ると非常にわかりやすく、もっと自分の気持ちに素直に撮影できると思います。


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by nichijou-raisan | 2018-03-25 22:23 | レバレッジリーディング | Comments(0)

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「われわれはいかに働き どう生きるべきか」 P.F.ドラッカー(ダイヤモンド社)

マネジメントで有名なドラッカーの幻の研修テープを活字化したものです。経営書ではドラッカーの本はたくさんありますが、この本は1970年代にAMACOM(全米マネジメント協会出版部)がドラッカーに依頼してマネジメントの極意をテープに吹き込んでもらったものです。

成果をいかにあげるか

人をどうマネジメントするか

必携の六つのツール

乱気流の時代をどう生きるのか

参考になる言葉の数々。

おすすめです。


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by nichijou-raisan | 2018-03-09 00:29 | レバレッジリーディング | Comments(0)

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山口県仙崎で育った詩人金子みすずの詩集です。多様性を歌った次の詩があります。

「わたしと小鳥とすずと」

わたしが両手をひろげても、お空はちっともとべないが、
とべる小鳥はわたしのように、地面をはやく走れない。

わたしがからだをゆすっても、きれいな音ではないけど、
あの鳴るすずはわたしのように たくさんなうたは知らないよ。

すずと、小鳥と、それからわたし、
みんなちがって、みんないい。

生前512編の動揺を書き上げたみすず。明治36年(1903年)4月11日に生まれたみすずは山口県仙崎で少女時代を過ごし、二歳の時に父を亡くし、金子家は一件の本屋を始め、みすずは自然と本好きになりました。みすずはその後、自ら詩を書くようになり雑誌に投稿しました。みずずの童謡は23編も雑誌で選ばれ日本中に知られるようになりました。そんな時、昭和5年みずすは26歳という若さでこの世を去りました。

「みんなちがって、みんないい」

この詩の中にみすずの心の祈りが込められています。地球上のすべてのものに対する祈りです。



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by nichijou-raisan | 2018-03-01 21:35 | レバレッジリーディング | Comments(0)

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「陰影礼讃」 谷崎潤一郎/大川裕弘(パイ インターナショナル)

谷崎潤一郎の名著「陰影礼讃」に写真家大川裕弘さんの写真で空間イメージを持たせたビジュアルブックです。現代に生きる我々では当時の日本建築の空間を文章だけから想起するのは難しいのかもしれません。日本建築をイメージさせる和の写真でいっそう主題が把握できます。

古き良き日本建築の持つ陰影の美をじっくりと写真とともに味わってみたい本です。


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by nichijou-raisan | 2018-01-29 23:30 | レバレッジリーディング | Comments(0)