「わたしの土地から大地へ」セバスチャン・サルガド

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「わたしの土地から大地へ」 セバスチャン・サルガド/イザベル・フランク(河出書房新社)

世界的写真家セバスチャン・サルガドの自伝です。

東京に行った時は必ずよる青山ブックセンターでたまたま手に取った本です。
帯にはこうあります。

「世界的写真家の、自伝。
 神の眼をもつひと、と称され世界中に大きな影響を与える報道写真家・・・」

この「神の眼」はどんなだろうとぱらぱら見てみると、驚愕の画像です。
その描こうとしている内容とは裏腹にある種、尊敬の念をもって捉えている画像です。

かつて究極のリアリズムを掲げた土門拳のリアリズムに美的要素という表現はふさわしくないですが、威厳とそれを超えた美が伝わってくるのです。

はっきりいって彼の作品は、移民、貧困、紛争などテーマは非常に重いものばかりですが、その一瞬の中に尊敬のまなざしと美へ昇華させているのです。

故郷であるブラジルで原住民の調査をしていて都市に住む人間は自然のかかわりにおいて違ってしまったといいます。我々は木の名前を忘れてしまったことや、自然のサイクルに関しても無知になってしまった。
はたして人は幸せになったのか、進化したのか、そんな問いかけが聞こえてきます。

サルガドはモノクロ撮影が中心です。
そのモノクロへのこだわりは次の文章でわかります。

「だけど白黒のイメージを見るときは、イメージがわたしたちのなかに入ってきて、わたしたちはイメージを消化して、そうと意識しないまま色づけをする。そういうわけで見る人のなかに摂りいれられて、見る人はイメージを自分のものにする。白黒のこういう力はほんとうにすごいと思う。」

写真集ジェネシスの一環で北極圏近くのネオツ族との出会いがありました。
彼らと一緒に過ごしたことで、わたしたちの生活を支えている大原則というのは、わたしたちのいまの社会ができあがるずっと前から存在していたという証拠が得られたそうです。

最後に彼の言葉集を。

「わたしはこの惑星と出会った」

「起源の人間はとても強くて、わたしたちがその後、都会化して忘れてしまった何かをたくさん持っている。わたしたちの本能だ。」

「自分たちはあらんかぎりの手段をつくして、人間という種の生き残りを保障してくれるものを破壊してしまっているんだということも見た。」

「都市化の結果として自分たちを自然から切り離したせいで、わたしたちはとてもややこしい動物になってしまったということだ。この惑星と疎遠になったせいで、わたしたちは奇妙な存在になってしまった。だけどこれは解決不可能な問題じゃない。対策のカギは情報にある。
もう少しでもこういった情報を提供できたんだとすれば、わたしは幸せだ。」

「惑星のほうへ戻っていくのが、よりよく生きるための唯一の方法だ、という確信だ。
現代世界は都市化されていて、規則や法律でいっぱいで、生命力をそがれてしまう。
少しばかり自由を取り戻そうというのなら、自然のなかにしかチャンスはない。」

「わたしの写真は社会活動じゃなくて、職業だ。私の人生だ。
わたしは写真が、撮ることが、カメラを手に持っていることが、フレーミングするのが、光と戯れることが大好きだ。人々と生きるのが、いろいろなコミュニティを観察するのが、そしていまでは動物や木や石を観察するのが大好きだ。
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by nichijou-raisan | 2016-08-08 00:15 | レバレッジリーディング | Comments(0)