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デフレの正体

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デフレの正体」 藻谷浩介 (角川oneテーマ21)

デフレについての本です。
といっても、現状はこうだこうだという内容ではなく、ほとんどの人が漠然と
勘違いしているデフレ感というものを覆してくれる内容です。

ビジネスに携わる人、生活者、これからの日本経済の行く末を知る
ひとつのきっかけになると思います。

著者の藻谷さん(モタニ)は政策投資銀行の地域振興グループに所属しており
地域振興について深い洞察のある方です。
国内市町村だけでなく世界59ヶ国を自費で訪ねるほどの情熱家です。

さて内容ですが、少子高齢化といわれつつも、なんとなくしっくりこない面がある
人が多いのではと思います。

日本が生き残っていくには、フランスやイタリア、スイスの工芸、家具などの
軽工業製品でブランドが作れるかどうかだといいます。

また街づくりでいけば、パリの街並みよりも資産価値の高い中低層の街並みを
東京や大阪につくれるかどうか。
世界中から本当の金持ちや資産家が集まって住んで消費しているのは、
パリやスイス、カリフォルニアなどの低層の高級住宅街、ショッピング街だそうです。

海外だとリゾート地がいくつもあって世界の富豪が買う話はよく出ます。
日本で和をキーワードとした高級な街並み、リゾートがあったら最高です。
改めて日本の価値を世界に問う、といったところですね。

リゾート経営に果敢にチャレンジする星野リゾート、星野社長の展開する星の屋も
そのひとつでしょう。
日本だからこそできるおもてなし、空間のおもてなし。

話は戻ってこのデフレ。実は「内需の縮小」こそ直面する大きな問題です。
モノの消費が落ち、デパートの売上げも頭打ちの状況が続きます。

藻谷さんは、内需不振の原因は、「現役世代の減少」と「高齢者の激増」といいます。

「現役世代」とは、14歳から64歳のことです。

総務省統計局のHPで数値が公表されています。
http://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/201012.pdf

高齢者の激増が何が悪いのか、現実的に何歳まで生きることがわからず
またいつ病気になるかわからない、将来的なリスクに備えて個人資産を
保全していなくてはならない、ということです。
そのため市場にはそのお金は流通せず経済も滞留することになります。

いわゆる団塊の世代(1940年代生れ)の移行が経済に大きな影響を及ぼし
ます。また団塊ジュニアといわれる1960年台後半も人口の塊があります。

経済は人口の波に大きく左右され、この団塊及び団塊ジュニアの年齢による
消費が大きく伸びたり縮んだりします。

消費の核となる生産年齢人口が減少を続けるので、国内中心の内需型産業
は供給過剰状態が続き、業績は回復しない見込みです。

次のような図式が成り立ちます。

生産年齢人口=消費者人口の減少⇒供給能力過剰⇒在庫積みあがりと
価格競争激化⇒在庫の時価の低下

公共工事については、これからが維持更新投資の本番だといいます。
インフラは出来上がったものの、40年近く経過した中で現状の使用に
絶えない部分の補修や改修が近年増え始めました。

そんな経済縮小の中でどうビジネスをしていったらいいのか。

日産のフェアレディZは、中高年。
ハーレーも中高年世代の購入が多いそうです。
HONDAの新型バイクCB1100もイメージは昔バイクに乗っていて
今は引退して生活に余裕がある世代を考えています。

成功のカギは次の通りだそうです。

1、高齢者の個別の好みを先入観を排して発見すること

2、高齢者が手を出す際に使える「言い訳」を明確に用意すること

3、多ロット少量生産に伴うコスト増加を消費者に転化可能な水準以下に
  抑えること

最後に、土地神話が崩れた現在、これからは工芸品や美術品、
銘酒、名車、名盤、優れたデザインの建築物など、ヴィンテージの付く
商品の購入が代わるといいます。
地域の特性を生かした地産地消の業種や、地域の特性、個性ある
都市景観の復活なども期待できます。
by nichijou-raisan | 2010-12-25 13:23 | レバレッジリーディング